静岡にお茶がなければ存在しなかったかもしれない建造物の話。
旧マッケンジー住宅
- 1940年にMacKenzie夫妻の住居として建設された
- William Merrell Vories氏の設計による建物
- 1972年に夫人がこの地を離れる際、敷地の半分が当時の静岡市に寄贈され、残りは静岡市が買い取り
- 1997年に登録有形文化財22-0007号として登録された
- 静岡県静岡市駿河区
- 月曜日や祝日の翌日等を除く午前九時から開館
お茶の貿易に携わった夫と、福祉の向上に携わり静岡市の名誉市民にもなった夫人が住んでいたこの建物は、国の登録有形文化財に指定された後も建物の内部を拝見することができるようになっています。また、建物の内部ではパネル等の展示も見ることができるようになっています。
夫妻の寝室として使用されていた部屋。寝具等がないため居間のように見えますが、建物の設計上は寝室となっています。
居間ではないため床面積はあまり広くありませんが、歩いて入れるクローゼットがあるということだけでも利便性があるように見えます。
寝室の下にあるのが居間。海の見えるテラスや庭に出られる構造になっています。
ゲスト用の寝室も採光を含めて考えられているためか、明るい印象があります。
明るいといえば、メインの階段も天井の高い構造になっているため開放的です。また、この階段とは別にお手伝いさんが使うための階段が、表から見えない場所に設けられています。
オーナーやゲストの動線から外れた場所にある、お手伝いさんのための部屋。畳敷きで決して広くありませんが、このような部屋にも蒸気暖房が設けられているのがポイント(今まで紹介してきた部屋やバスルームにも完備)。
汚れても掃除しやすいタイル張りのキッチン。現代のシステムキッチンと比べると質素ですが、石けんを置くためのくぼみが最初から建物の一部として設計されているなど、細かな配慮が各部に見える部屋となっています。もちろん、ここも蒸気暖房完備。
時計と温湿度計が一体になったものが壁に取り付けられています。時計の盤面にHoneywellの文字が見えますが、時代を考えるとさすがに温調まではしていないと思われます。
……とここまで見てくると、同じVories氏の手による建築物として有名なこちらの建物と共通の言語が見えてくるかもしれません。
ともに、中で生活する人、利用する人のことを考えた細やかな配慮の数々。建築物は外観しか見る機会のないものが多く、外から見える部分で語られることが多いのですが、本当に大事なのはその内側。ここでは、そんなことを考えさせてくれます。