豪華な南瓜三本立ての味は?

2015年10月31日から上映が開始された「GO!GO!!豪華3本立て!!!」な映画を観て感じたことなどを、以下に記します。

なお、本文にはネタバレ、またはそれにつながる記述が含まれる場合がありますので、未鑑賞の方はご注意ください。

まず、今回の映画で異例に感じたのが、公開初日の舞台挨拶を含む回の入場券が発売当日に即完売せず、最終的に当日券が発売されたという点。舞台挨拶回が多数設定されていた作品であればまだしも、二会場三回分という標準的な回数でこの結果は経験上、以前なら考えられなかったことです。それだけ、シリーズの力が衰えてきたのだろうか、と感じさせられる現象であると考えます。

では、この「三部作」はどうだったのか?演出上、一本の映画の中に三本の話があるようになっていたと思われますが、ストーリー上、お互いの関連性があまりなく、単に共通していたのは「カボチャ」だけ。そこが少し残念でした。

短編の「いたずらかがみ」は、文字・音声ともに一切の台詞が含まれないスタイルの作品。いいかえれば、日曜日午前八時半枠でしばしば出てきた「表情やしぐさでメッセージを伝える」表現だけで構成された作品です。また、流れの速い部分とゆっくりな部分をうまく使い分けることにより、軽快な印象を持ちました。

長編、というか「いつもの映画」パートな「パンプキン王国のたからもの」は何だったのかというと、月並みな表現ですが「家族愛」。それと「誰かに背中を押してもらうというきっかけを得て、自分たちの力で状況を変えていく」話。過去のシリーズでたとえると、メイジャーランド王族の家族愛、ラビリンスを管理国家から自治国家に変えようと努力を始めた同国民。そういう意味では過去の作品とテーマが被りますが、言い換えれば、主張にぶれがないということもできるかと思います。

で、中編?の「ワンダーナイト」(登場人物の名前が某ゴム人間?に似ているので混同しがち)。おそらく、今回の三部作中もっともポイントとなる作品。反響しだいでは、今後の作品制作にも影響を及ぼす可能性もあるでしょう。いつものセル画調から一歩踏み出し、より彫りの深い表現にした3DCGキャラクタを動かし、挿入歌が流れている間に軽快な展開で話が動いていく点は見どころだと思います。テーマは、いつものとおり「くじけるな、あきらめるな」。ここでも、主張のぶれはありません。

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と、ここまで比較的好意的に書いてきましたが、通して観た感想は「軽いかな?どこかで見たような?」という点。テーマに重みがなく、なんとなく既視感を覚える内容と表現。長編には、短編や中編にあったテンポのよさが足りないようにも感じました。
見方を変えれば、「猫と鼠が仲良くけんかする話」や「頭の中に餡が詰まっているヒーローが、黴菌扱いされている登場人物と愉快に戦う話」を連想してしまう可能性もある短編と中編。ないとは思いますが、もし短編や中編のような「新しい映像表現」を見てもらう口実として長編が存在するのだとしたら、それは残念なことです。

あと、本映画におけるゆいゆいの扱いは、メインに近いサブキャラクタとして非常に残念なことになっていました。その仕返し?として、最後にみなみんの前に化けて出てきたようですが……。今回は、異次元世界の状況が別の世界に影響を与える設定ではなかったので、途中でゆいゆいがはるはるたちを心配する場面を挿入できなかったのは理解できますが、一方で登場人物をもっと大事に扱うようになれば、話の構成もより丁寧になったのではないかと思うのです。

来年春も「オールスターズ」映画を上映する予定らしいですが、メインキャラクタだけで40人を超える状況下で、一人ひとりの登場人物をどこまで大切に扱えるかが気になるところ。以下は勝手な発想ですが、メインキャラクタたちをシャッフルするなり、いつもの桃青黄の三チームに分けるなりして、独立しながらもストーリーがつながっている三本の映画として構成すれば、もっとキャラクタ一人ひとりが輝くようになるのではないでしょうか?