けものたちの「かいがいりょこう」

今いる「パーク」の外にあるといわれている、「にっぽん」という名の「海外」へ行こうと考えているが行き方がわからず、自称「賢い博士」のところに聞きに行ったけものたちの話。

かばん 「ぼく、ヒトの住む世界に行って、どんな生き方をしているのかを知りたい。」
博士 「その世界に行くには、自分がどこの誰なのかを証明する『ぱすぽーと』というものが必要なのです。」
助手 「しかし、ここには『ぱすぽーと』をつくってくれる場所がないので無理なのです。」
かばん 「そ、そんな……。」

サーバル 「わたし、かばんちゃんといっしょに向こうの『ちほー』に行ってみたい!」
博士 「サーバルは、『にっぽん』では『とくていどうぶつ』に指定されているので、向こうできちんとした檻を持っているヒトに招待してもらわないと入れてもらえないのです。」
助手 「だから、『にっぽん』に入れても自由にはなれないのですよ。」
サーバル 「え~っ、そんな~!」

アライさん 「アライさんもみんなといっしょに『にっぽん』というところに行ってみたいのだ!」
博士 「アライグマは、行くのをやめたほうがいいのです。」
アライさん 「う゛~っ、なぜなのだ?」
助手 「アライグマは、『にっぽん』では『とくていがいらいせいぶつ』に指定されているので、『にっぽん』からの許可をもらわずに入ると捕らえられて、駆除されてしまうこともあるのですよ。それでもいいのですか?」
アライさん 「そ、それは……アライさんの危機なのだ!」

フェネック 「じゃぁ、わたしが行ったらどうなのかな~?」
博士 「フェネックは『とくていどうぶつ』でも『とくていがいらいせいぶつ』でもないから基本問題はないのですが、それでも『にっぽん』に入るのは難しいのです。」
フェネック 「それはなんでなのさ~?」
助手 「『にっぽん』に限らず、ほとんどの『ちほー』には『どうぶつけんえき』というのがあり、入る前にしばらく『けんえきじょ』に軟禁されなければならないのですよ。それでも行こうとしているのですか?」
フェネック 「へぇ~、そうなんだ。」

オグロプレーリードッグ 「わたしも少しだけ『にっぽん』に行ってみたいのであります!」
博士 「それは無理なのです。」
助手 「今の『にっぽん』では『ほうりつ』というものによって、プレーリードッグは『にっぽん』に入ることができないのですよ。」
オグロプレーリードッグ 「……。」

スナネコ 「……満足。」
一同 (スナネコは本当に冷めるのが早い……。)

【解説パート】

  • 「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年10月1日法律第105号)により、日本国内での飼育に許可が必要な動物があります。
  • 「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(平成16年6月2日法律第78号)により、日本国内への輸入や飼育等に制約のある動物があります。
  • 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年10月2日法律第114号)により、日本国内への輸入ができない動物があります。
  • 2017年8月現在、「サーバル」は特定動物に該当しますが、サーバルとイエネコの交雑種である「サバンナキャット」は犬・猫の輸入手続きに従って輸入できるようです。
  • 「アライグマ」は特定外来生物なので、新たに愛がん動物として飼育することはできません。また、野生化した「アライグマ」は駆除の対象となり、また「防除の確認・認定」手続きの対象となったものもあります。
  • プレーリードッグ全般は、2003年3月以降の日本への輸入が禁止されていますが、それ以前に輸入された個体とその子孫であれば引き続き日本国内でも飼育は可能のようです。

ということで、ヒト以外の生物を移動させることについては、法律等による様々な制約があることを知っておきたいものです。